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2020/09/04
昔、信州中野鴨ヶ岳(かもがたけ)の麓に小館城(こたてじょう)という城があり、城主の高梨摂津守政盛(たかなしせっつのかみまさもり)には黒姫という美しい姫君がいた。
ある春の日の事、政盛達が花見の宴の最中に一匹の白い蛇が現われ、上機嫌の政盛は黒姫に蛇にも酌をしてやるよう勧めた。黒姫が盃を蛇の前に差し出すと蛇は酒を飲み、しばらく黒姫を見つめた後去っていった。
その夜、黒姫の所に一人の立派な若者が訪れ、黒姫に自分の妻になって欲しいと言う。若者の言葉に黒姫は戸惑い、まずは政盛から許しをもらうよう答えると、若者は自分が来た印として鏡を置き消えていった。
若者は大沼池の主の黒竜であり、昼間の宴で黒姫に盃をもらって以来黒姫の事が忘れられなくなったのである。黒姫をさらうのは道理に反するため、若者は毎日城に通いつめ政盛に同じ願いを繰り返したが、政盛も大事な娘を竜の化身に渡すわけにはいかず、若者の申し出を断り続けた。